「旧都城市民会館のシンポジウム」に”非専門家”の私が参加して感じた違和感

6月29日、DOCOMOMO Japan 主催のシンポジウム、「都城市民会館はなぜ解体にいたったのか? ―メタボリズム建築の過去・現在・未来―」を聞かせていただきました。
会場の、東京大学工学部1号館。

プログラムは3部構成。
第1部 なぜ、都城市民会館は解体にいたったのか?
第2部 メタボリズム建築の現状は?
第3部 メタボリズム建築の未来にどのように対処すべきか?
となっており、「過去・現在・未来」に対応させたとのことでした。

主催者のDOCOMOMO Japan のサイトには、次のような趣旨が掲載されています。
冒頭部分を引用します。

これは今回のシンポジウムの告知リーフレット(DOCOMOMO Japanのサイトより)

「2019 年3 月19 日、都城市市議会にて解体予算修正案が否決され、事実上解体が決定しました。イコモスインターナショナル、ドコモモインターナショナルなど日本国内外の専門家たちから解体への強い反対表明がなされたにもかかわらず、都城市は解体へと動いています。しかし、一方で、専門家による閉じた議論、一般市民の無関心、そして、ドコモモジャパンの長年にわたる不作為の状態から、解体が表面化するとすぐさま反対運動をするという拙速な行動自体が、解体になんらかの影響を与えた可能性もあります。」

これを読んで、”非専門家”の私も参加を決めたのですが、趣旨を読んで不安に感じる部分もありました。
1) 「専門家たちから…強い反対表明がなされたにもかかわらず…」という表現。
2) 「一般市民の無関心」という表現。

1) を読むと、「自分たちの主張が通るのが当然である」という専門家の上から目線をついつい感じてしまいます。素人のひがみでしょうか。
また、2)を読むとどうも専門家の怒りの対象は一般市民にも向けられているように思えます。さて、(都城市民ではないですが)一般市民である私が出席しても大丈夫なのでしょうか?

ネット上では今回のシンポジウムが「事実上の反省会」とも言われているようです。上の趣旨を読むと確かに「専門家による閉じた議論」とか「拙速な行動」という部分には、反省会のニュアンスが感じられます。しかし「一般市民の無関心」という部分には、責任が一般市民にもあるという結論になるのではないかという危惧も感じられます。少々不安に思いながら参加しました。

第1部では、専門家から旧都城市民会館のこれまでの経緯の説明と、都城市で保存運動に関わってきた方の発表、専門家の役割についての発表がありました。
質疑応答の場面では、都城市役所の担当者の方もいらっしゃっていて、お話を聞くことができました。真摯にお話をしていただいた印象を受けました。

第2部では、メタボリズムの全体像についての発表、それから旧都城市民会館以外の建築の事例発表でした。中銀カプセルタワー、山梨文化会館、山陰の菊竹建築群について、の3事例です。
個人的には、山梨文化会館の使い方、メンテナンスや改修の仕方が一番印象に残っています。

第3部では、白井晟一建築の保存活動についてと、文化財を保護するための官民連携についての発表がありました。
特に官民連携については、さまざまな保存の仕方があることを具体的に提示し、興味深かったです。

さて、ここまでは私も分からないなりに興味深く話を聞いてこられました。
ところがこのあと、私にとっては大きくシンポジウムのイメージが変わったのです。

最後にまとめ的な意味も込めて、予防的保全と継承的保全についての発表がありました。
この発表は、私の脳内に「????」を連発させることになりました。

「2019年1月18日、都城で私も考えた」という話から始まりました。
こういう項目です。(スライド内容を転載)

1. 都城市民会館の壮麗さに感銘。
2. 市民の無関心に驚嘆。
3. 市民の多くが都城市民会館になんらかの記憶があることを発見。
4. 専門家たちの大いなる努力への敬服。
5. 市行政の解体向けた綿密な作業の積み重ね。
6. SNSにおける無責任な暴言への違和感。
7. 現地の、やや粗野で、マッチョな保存過激派への違和感。
8. そして、自分も何かしなくてはいけない、何かをここで学ばなければいけないとの決意。

そして、専門家から見た現状認識はこのようなものだったらしいのです。
(図は、スライドを再現したものですが、写真は省略しました。多少バランスは変わっていますが、文字サイズはほぼ元通りです。)

これらを見ると、
都城市民は「無関心」(なんせ一番大きな文字ですよ)で、解体推進派市民は「頑迷」で、逆に解体反対派はというと、こちらは「やや粗野でマッチョな保存過激派」だということなのです。そして外部の解体反対派は「無責任」だと。

専門家がこういう視点でいることに驚きました。これって、SNSで無責任に交わされていた議論の再現じゃないですか。公平性が感じられません。
専門家が自分の立場の主張があるのはいいんですよ。でも、他の立場を印象批判してどうするんですか。専門家なら論理的に示して欲しいんです。
(「いきなりヘリテージアラート出しちゃう専門家たち」とか書いてあったら笑えたかもしれませんけど。)

さらに私が賛同できなかった部分。「ヘリテージバタフライ」という説明でしたが、これもスライドを再現しました。

意味が分からなかったのが「自慢」。どうも専門家の方は「建築は地域の自慢であるべき」だと思っていらっしゃるのではないかと。
実際に都城市で「地域の自慢は?」と聞いて、「霧島の風景、焼酎、牛肉~」と出てきて旧市民会館が出てこないことをお怒りのようですが、当たり前です。10年も放置して手入れもされていない建物を「自慢です」って堂々と言える市民がいたら、逆に驚きですよ。

そして話を進めて、「左側の羽が小さいから飛べないんだ」とおっしゃるのです。
要は、「非専門家がダメだから保存できない」って話になってしまうんですよ。
え?専門家は変わらなくていいんですか? その専門家目線というヤツが嫌われているのに?

「いや、この話は『予防的保全と継承的保全』を述べるための前振りだ」とおっしゃるのかもしれません。でも最初の立ち位置がズレたままだと、理想の方向には進めないのではありませんか?
私は自分が「非専門家」ですから、この話は「お前らが悪い。専門家は正しい」と主張しているように受け止めてしまうのですよ。

このあと「具体的な行動」の話もされていましたが、
「若い女性たち(非専門家・精神的まっちょでない)との協働で、都城市民会館について、楽しんで、その記憶や意味を市内外に知らせること」という文が出てきて、ここにも驚きました。
いや、ここで「若い女性」と限定する意味は何ですか????
ああ、中年親父の論理だわ…と、がっかりしたのですよ私は。

このあと、『予防的保全と継承的保全』のお話があったのですが、もう話の入口で気が遠くなって頭に入ってきませんでした。
他の専門家の方たちは何ごともなかったかのように受け止めていらっしゃった(?)ようですけどね。

非常にもやもやとした気持ちで帰路についた私です。

ところでこのシンポジウム、DOCOMOMO Japanはまとめとかして発表はしないのでしょうか。

私は少し前から都城市民会館は気に掛けていて、これは主催者は別だと思うのですが2018年に地元で何回もシンポジウムが開催されていて、告知を見ていたのです。遠方のため参加はできませんでしたが、せめてどういうシンポジウムになったのか、ネット上で見られるといいなとずっと思っていました。(私の見落としの可能性もありますが)残念ながら公開はされていないようです。

今回の発表の中で「地元でいろいろニュースになっても、ローカルニュースの域を出ない」という発表がありましたが、だからこそネットを使うしかないように思います。
今後に生かすなら、シンポジウムの成果と課題を確認できるようにした方が良いと思います。

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「素人は好き勝手言ってればいいんだから無責任で気楽だよなあ」という幻聴が聞こえたので。

1)今回提示されたヘリテージバタフライは、こうした方が保存運動に位置づけできるのではないかと、ちょっと勝手に変えてみました。縦方向に時間軸を入れて、専門家と非専門家を対応させたのです。ま、素人考えですけどね。

2)ツイッター上では何回も出してますが、私自身は手をかけてこんなのを作ってます。これも「建築との関わり」の一つでしょ?

あと余談ですけど、「建物はなくなっても記憶や記録に残す」という市の発表なのですが、都城市には、この旧都城市民会館の前身として「都城市公会堂」(昭和2年築・58年解体)があったわけです。ところが、こちらの記録はネット上ではほとんど見つけることができません。「須田記念館」で検索すると自分のブログがトップに来る状況って、何なんでしょうね。
語り続けたり、どこかで目に見える状態にしておかないと、結局、今回の旧市民会館も記憶から消えていくと思います。

(ネット環境しか見ていない素人が好き勝手書いてます、失礼いたしました。)

2件のコメント

  1. はじめまして
    シンポジウムに息子と参加しました。
    元都城市民で非専門家・専門家の立場で名古屋から参加しました。12年前の保存運動でも全国の建築士等に呼びかけました。こちらの記事を拝読させて頂き全く同じ想いです。記事掲載ありがとうございました。あの場で発言する勇気がありませんでしたが遠藤先生にお会い出来た事が何よりの収穫でした。恐れながら勝手にFBにシェアさせて頂きましたので宜しくお願いします。

    1. コメントを頂きありがとうございます。
      これを書く時は、素人がどこまで書いていいのかこわごわと書いていたのを思い出します。しかしいつのまにか、閑散とした私のブログでは一番アクセスして頂いた記事になっていました。賛同していただきありがとうございます。

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