大阪市電気局の建物(2)

2021-03-20

旧大阪市電気局関係のポップアップカード、その2です。
今回作ったのは旧大阪市電気局本館です。

道路に面した壁面を正面にして製作しました。建物の正面玄関は左側にあります。

写真では塔屋の部分だけちょっと暗くなっていますが,これは前回の九条電灯営業所と同じように、別パーツを接着しているためです。

塔の上端でパーツを接着し、塔の背面に回して下に下げ、それを正面へ出して窓の装飾凸部分にしています。って言葉で書くとよく分からないですね。

大阪市電気局本館は1928年(昭和3)6月に着工し,1930年(昭和5)3月に完成しました。鉄筋コンクリート造6階建,工費は118万円だったそうです。

昭和10年時点では、本館の一階には「市電の店」、二階には「電燈部」、四階には「配電司令室」、五階には「電気普及館」が入っていました。
当時は電気の普及宣伝活動も業務の一つでした。

電気普及館

五階の電気普及館は,庁舎の新築と同時に設置されました。
照明を始めとした各種電気器具や工事材料を展示し、合わせて販売も行なっていました。舞台照明室や電気料理講習室などの部屋が設けられ、料理の講習会や電気に関する会合も開かれていました。
また、照明器具やネオン看板などの設計も請け負っていたそうです。

「電灯市営の十年」(大阪市電気局 昭和10年)に写真が掲載されています。
この写真は料理講習室です。

こちらは商店照明室。

他に,和室・洋室の照明例の展示室、工場照明室、舞台照明室、街路照明室、講義室などの写真が掲載されていました。

市電の店

1930年、電気普及館の開設から3ヶ月ほど後の6月、営業課の中に普及係という部署を設け普及宣伝活動に専念させるようになりました。普及係が1931年に本館の一階に設置したのが「市電の店」です。
店内の様子の写真があったので引用します。

市電の店はその後、1937年に電気科学館が開設したときに科学館の一階に移転され、「陳列所」として、より拡充されたそうです。

電気科学館については、普及宣伝活動の大きなものとして触れるべきですが、別の建物の話になるので、また改めて書こうと思います。

普及宣伝活動としては他に、1937年の末にサービスカーの運営も始めています。出張所の業務を行なうとともに,電気器具の陳列も行なっていました。昭和12年時点では2台のサービスカーが運用されており、市内に100箇所以上の駐車場を確保して巡回していたそうです。

その後さらに一台増やされましたが、昭和16年9月からはガソリンの消費規制によって減車、昭和17年時点では1台のみの運営でした。

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前回書いたように,大阪市は戦時中に電気事業を関西配電に移管しました。
1945年9月に大阪市交通局と名を変えて、大阪市電気局本館は大阪市交通局の庁舎となり使われてきました。

2004年に、交通局は隣接地に新築された庁舎に移ります。旧庁舎は解体されてしまいました。旧庁舎の跡地は現在大阪市消防局が建っています。

なお、大阪市は2018年に市営地下鉄事業を大阪市高速電気軌道株式会社に,バス事業は大阪シティバス株式会社に運営を譲渡し、大阪市交通局は民営化されました。

【参考】
「電灯市営の十年」(大阪市電気局 昭和10年)
「大阪市電気局事業概要」(大阪市電気局 昭和12年)
「大阪市電気供給事業史」(大阪市電気局 昭和17年)