蔵春閣
長野市の城山公園に蔵春閣という建物がある。
1967年(昭和42)に建てられたもので、すでに使われていない。閉鎖前は旧蔵春閣と呼ばれていた。

現時点ではまだ工事は始まってはいないが、建物が解体されることが既に決まっている。
そのため記録としてこの記事を書く。
実はこの蔵春閣は二代目である。初代蔵春閣は1908年(明治41)に建てられた。
1908年、長野市を会場にして1府10県連合共進会が開催されたのだが、その貴賓接待館として建てられたものだ。182畳敷き相当の大広間があったという。

その後公会堂として集会やイベント、演奏会などに使われてきたが、1949年(昭和24)に火災で焼失してしまった。
2代目の蔵春閣は、1967年に長野市政70周年の記念として建てられた。
設計は三沢浩研究室・大村六朗建築設計事務所、施工は守谷商会が担当した。

鉄筋コンクリート3階(一部4階)建ての建物には、ホールや喫茶室、食堂、結婚式場などを備えていた。特徴的だったのは、屋上に野外劇場が設置されたことだ。
120人を収容できる野外劇場で、北側にステージが、南側に階段状の観客席がある。
これは建物の南面。

建物は丘の上に建っているので、丘の麓を歩いて東側に回り込む。

こちらが東面。

建物の北側の道路を歩いて、北西側から撮影。

竣工後30年が経過し、建物の傷みが進んできた。1998年(平成10)に市で検討した結果、雨漏りなど必要最小限の補修をして10年くらい使い、その後廃止を考えるということになった。
2005年(平成17)1月に蔵春閣の用途廃止が決定され、翌年3月に蔵春閣の設置条例が廃止された。
公会堂としての蔵春閣の運営は終えたが、2006年4月から建物を「城山公民館別館」として、市民の活動の場として使用した。(「旧蔵春閣」とも呼ばれるようになった)
再び正面に回ってきた。
玄関には「城山公民館別館」と書かれているが、「蔵春閣」と記された表札も残っている。

建物の北西側には機械室がある。昭和風味を感じる階段はおそらく食堂に上がるものだと思う。

長野市は2017年に、修繕での維持は困難だということで旧蔵春閣を閉鎖することを決めた。
そして2018年3月に旧蔵春閣は閉鎖された。
市は城山公園を再整備する予定で、2020年に城山公園再整備基本構想を発表した。その中で蔵春閣の解体は2020年代の半ばに設定されていた。
はっきりした時期は分からないが、近いうちに解体される。
【参考】
「長野市立城山公民館報」第175号(2018-03-01)
「長野市公文書館便り」Vol.34 (2018年4月)
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