「戦争ト玩具展」
会期が2019年8月16日までなので、もう会期終了間際なのですが。
「戦争ト玩具展」(主催:信州戦争資料センター・公益財団法人八十二文化財団)を見ました。戦前・戦中の玩具等を展示し、そのモノ自身に語らせようという企画です。
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これはチラシを撮影したもの。チラシは三種類のバージョンがあるようです。
会場のギャラリー82(長野市)。長野駅から400m位のところにあります。
入場無料、しかも撮影可能でした。
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信州戦争資料センターの方針は「戦争をしたくない」が基本なのですが、しかし、大きな声で主張をせずに静かに「モノ」に語らせる、というのが方針のようです。
そんなわけで、落ち着いてモノを見ることができそうなので、行くことにしたわけです。
今回展示されている実物資料は86点。
その中で当ブログでは「双六」だけピックアップしてみます。
(見落としがなければ)会場には9点の双六が展示されていたのですが、年代順に。
(1) 婦人生い立ち双六(大正7年)「婦人世界」新年付録(実業之日本社)
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ふりだしが「幼児」で上がりが「結婚」。左半分は「慈愛」「質素」「規律」「従順」「克己」「敬老」「勉強」「修養」など、身に付けるべきだと思われていたこと。右半分は「盲愛」「贅沢」「ひがみ」「軽率」「女中任せ」「高慢」「怠惰」など、してはいけないことが。
(2) 子だから双六(大正8年)「婦人世界」新年付録(実業之日本社)
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ふりだしが「結婚」、上がりが「子宝」。
女性に対して社会が何を求めていたか、分かる資料だと思います。
時代的には…
大正7年(1918) シベリア出兵。米騒動。
大正8年 パリ講和会議開催。朝鮮半島で三・一運動、中華民国で五四運動。
大正9年 国際連盟設立。新婦人協会設立。
(3) 日本陸海軍軍人双六(大正13年)(吉田彌七発行)
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会場の説明板には「個人商店の発行か」とありました。
ふりだしは「出征」、「地雷」「突貫」「水雷」「機関銃」「飛行機」「爆弾」「騎兵」「砲台」「赤十字」「伝書鳩」「軍旗」「タンク」「毒瓦斯」「潜水艇」「司令部」「上がり」となっています。
大正12年 関東大震災。
大正13年 皇太子裕仁親王(昭和天皇)御成婚。
大正14年 治安維持法制定。
(4) 忠孝双六(昭和2年)「幼年倶楽部」新年号付録(大日本雄弁会講談社)
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ふりだしは楠木正成・正行。乃木大将、名和長年、河野道有…など忠孝話。
そして上がりは皇居。
時代的には…
昭和2年 昭和金融恐慌。
昭和3年 張作霖爆殺事件。
昭和4年 世界恐慌。
昭和5年 昭和恐慌。
昭和6年 満州事変。
(5) 支那事変皇軍大勝双六(昭和14年)「主婦の友」新年号付録(主の友社)
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昭和8年には日本は国際連盟を脱退しています。
昭和11年 二・二六事件。
昭和12年 盧溝橋事件、第二次上海事変(日中戦争開始)。
なので、戦争中に発行された双六です。これが「主婦の友」の付録なんですよね。
(6) 皇軍万歳双六(昭和15年)「少女倶楽部」新年号付録(大日本雄弁会講談社)
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右上に、「陸軍省情報部校閲・海軍省軍事普及部校閲」と書かれています。
遊び方にはこんなふうに書いてありました。
「この双六をおはじめになる前に、まづ戦地の兵隊さんに心から、そのおほねをりに感謝し、武運長久をお祈りいたしましょう。
この双六は銃後の少女の心がけと戦地のやうす(様子)が、たのしくあそびながら、しらずしらずのうちに、くはしくわかる双六です。誰にでもやさしくでき、しかも大ぜいでできますから、家中の皆さんでおやり下さい。」
コマに出てくる言葉をいくつか。
「8 慰問袋 少女のやさしさまごころこめて」
「9 貯金 貯金するのも忠義の一つ」
「13 国債を買ひませう 国債を買って長期のそなへ」
「28 出征遺家族慰問 みんなで護ろう出征遺家族」
「29 スパイに注意 はずむ話にゆるすなこころ」
(7) 翼賛双六(昭和15年12月)漫画社発行
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ああ、これはあれだ。以前読んだ本「大政翼賛会のメディアミックス」にあった「翼賛一家」だ。双六にも使われていたのか。
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大政翼賛会が成立したのが昭和15年10月なので、当初からいろんなメディア戦略を進めていたということですね。写真の右下にいるのが「翼賛一家」の「大和家」です。使用料を払えば自由にこのキャラクターを使えたということで、多くの漫画家が作品を描いたようです。
(8) へいたいさん双六(昭和16年)「コクミン二年生」正月号付録(小学館)
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このロゴタイプって小学館の「小学二年生」じゃありませんか。当時は国民学校になっていたから、「コクミン二年生」というわけですね。
(9) 双六大東亜共栄圏めぐり(昭和19年)「家の光」付録(中央農業会)
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「家の光」って農業系の雑誌ですよね。今はJAグループでしょうか。
日本をふり出しに、アジア各地をまわるように描かれています。
ちょっともう、色ズレが大きくて印刷技術が辛い感じ。
というわけで、今回は双六に限って掲載しました。
会場ではその他にも、絵本や紙芝居、メンコや人形など展示されていて、それぞれ興味深いものでした。
絵双六をちょっとだけ検索したのですが、江戸時代からいろいろあったようですね。もっとも古いと言われているのは浄土双六で、仏教の世界観を表したものだとか。
【関連サイト】
信州戦争資料センター「戦争ト玩具展」(2019/07/01)
同「主張をしないわけ」(2016/04/07)
東京学芸大学付属図書館「絵双六とは」(リンク先が移動していたため修正:2022/8/13)
東京都立図書館「浄土双六」
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