大阪市電気局の建物(3-後編)

2021-03-20

旧大阪市立電気科学館のポップアップカードができました。
前回触れましたが、電気科学館は1932(昭和7)年に発案され、1934(昭和9)年に着工しました。開館は1937年です。

昭和8年が大阪市電気局が発足して10周年だったので、その記念事業の一つだったそうです。
設計は、大阪市経理部営繕課の新名種夫(しんみょう・たねお)が担当しました。

比較のため、前回も載せた画像を再掲載します。この写真では見えませんが、6階にプラネタリウムが設置されており、屋上にそのドームの膨らみが出ていました。

参考 1975年の航空写真(国土地理院サイトより)

このポップアップカードは、ドームと言うにはちょっとガタガタしてますが…。

電気科学館建設の初期の案では、館内設備は美容室、大衆浴場、大食堂、スケートリンクという内容で、電気利用のショールームという計画だったようです。その後、電気の原理と応用に関する展示と、プラネタリウムを設置することが決まりました。

開館時の施設は以下のようになっていました。(「大阪市電気局事業概要」昭和12年 より)
・地階 大衆食堂、電気機械室など
・1階 陳列所(市電の店)「市電の店」は、もとは1930年に大阪市電気局本庁舎の一階に開設されたものです。電気科学館の開館に際して移転しました。
・2階 電気館(弱電無線館)、事務室
・3階  同 (電力電熱館)
・4階  同 (照明館)
・5階  同 (電気原理館)、図書館、研究室   
・6階 天象館(プラネタリウム) 
・7階 観覧者休憩室
・8階 事務室
・塔屋9階 屋上遊歩道
・塔屋10~15階 防空塔 
・塔屋屋上 神宮遥拝所

「科学館」を名乗りながら神宮遥拝所があることに時代を感じます。

休館日や開館時間なども同書に載っていました。
・休館日  毎月第1と第3月曜日、及び年末年始(12月29日~1月3日)
・開館時間
  電気館、天象館(有料ゾーン) 9:00~17:00
  陳列所(無料ゾーン) 9:00~19:00
・観覧料
  電気館 20銭(13歳以上)、10銭(13歳未満)
  天象館 40銭(13歳以上)、20銭(13歳未満)
  共通券 50銭(13歳以上)、25銭(13歳未満)
 この外、十枚綴りの回数券も販売されていました。

「大阪市電気供給事業史」(昭和17年)には、開館当初の昭和12年は約17万人、昭和16年には32万人に増えたと書いてあります。

1945年3月の大阪空襲では、電気科学館も部分的に炎上しました。プラネタリウムは無事だったのですが、避難してきた住民の受け入れなどで営業はできず、そのまま終戦を迎えます。

プラネタリウムの再開は1946年2月。社会が安定してからは一般市民だけでなく学校団体や修学旅行生も訪れるスポットとなりました。

1989年は大阪市政100年の年だったのですが、それを記念して関西電力が科学技術館を建設して大阪市に寄付をすることになりました。それが現在の大阪市立科学館です。それに伴って1989年、電気科学館は閉館しました。

閉館後、次は一時的に大阪市中央図書館が入ることになります。
中央図書館が現地建替えのため、1992年9月から1996年2月まで、旧電気科学館の建物を使って仮営業していたのです。プラネタリウムのドーム部分は書庫として利用されていたそうです。

図書館の利用後、1998年に旧電気科学館は解体されました。

参考 
・「大阪市電気局事業概要」(大阪市電気局 昭和12年)
・大阪市立科学館のサイト「科学館の沿革~電気科学館について