春近発電所見学会

2022-11-22

9月に、春近発電所(長野県伊那市東春近)の見学会が開催された。
春近発電所は1958年に運転を開始した県営最大の発電所である。築60年余りが経過し、大規模改修を行なうことになっている。

それに先立ち、発電所見学会を開催するというので、行ってきた。

春近発電所は三峰川(みぶがわ)総合開発事業の一環として建設された。

長野県では1949年に夏の干害、デラ・キティ台風、9月の豪雨などの災害により、損害は80億円にも達した。そこで県は「信州河川総合開発委員会」を設置して災害対策をしていくことにした。12月には仕事を担当する「総合開発局」が置かれ、第一回「長野県総合委員会」で、天竜川水系の三峰川と千曲川水系の野辺山川について調査を始めることになった。

三峰川は昔から水害を引き起こしてきた川だったので、その水害を抑えるためにダムを造り、その水を発電と干害に使うという計画が立てられた。

美和ダムは1954年仮排水路の工事に着手、56年に堰堤起工式が行なわれ、58年に完成した。
ダムに付属して美和発電所も建設された。
美和ダムの1km下流には、美和ダムからの水と藤沢川の水を溜める調整ダムとして、高遠ダムが建設された(58年完成)。
高遠ダムから下流には、灌漑用水路と春近発電所までの導水路が建設された。約11kmのトンネルを掘り、途中の分水口で潅漑用水を分けるというものであった。
春近発電所も1958年に完成した。

図は1960年に長野県総務部文書広報課が発行した「災害をこえて:昭和34年の台風を中心として」から引用した。

発電所が建てられてから60年以上経過しているので、大規模改修を行ない、発電機や変電所を新しくするということになった。

以下当日の見学会の写真をもとに書いていく。

受付を済ませ待合所で少し待機。1958年11月16日の伊那毎日新聞が掲示されていた。
見出しに「今日感激の完工式」「世紀の大事業・三峯総合開発完工」の文字が見える。

この建物の中に発電機が入っている。建物は引き続き利用される。

建物の向こう(東側)に、水圧鉄管が見える。高遠ダムからトンネルを通って運ばれた水は、水槽にためられこの鉄管を通って発電機に導かれる。

発電所を建物の北側には変電所がある。こちらも新しくされるらしい。

中に入って制御装置を見る。現在は発電所は無人で、長野市にある中央制御室から監視制御をしているそうだ。

発電機のある建物内に入った。

天井が高い。

発電機は2台ある。この日は1台が運転していた。
発電機の水車の型式は、立軸フランシス水車と書かれていた。これは最も一般的に使われている型式だという。

屋外には、実際に使われていた水車が何種類か展示されていた。

これは、ペルトン水車という型式で、与田切発電所で使用されていたもの。展示されている中では一番大きかった。水をノズルから噴出して水車を回すので、ノズルの調節をすることで出力調整がしやすいそうだ。

発電所から出た水は、水路を通って天竜川に流れていく。

春近発電所は11月から工事が行なわれ、出力が23,600キロワットから26,000キロワットに増やされるそうだ。また災害時に対応するための小水力発電棟も建設されるという。
運転開始は、2025年の予定である。

※投稿時、再開年を誤って表記してしまったので修正(2022.11.22)

参考「災害を超えて:昭和34年の台風を中心として」(長野県総務部文書広報課/1960)

日本の建築

Posted by Sakyo K.