ララオカヤ
ここは長野県岡谷市。岡谷駅前に、すでに閉鎖されているがララオカヤという建物がある。岡谷市の市街地再開発事業で1984年にオープンした商業施設だ。

開業当初は諏訪バスと地元地権者が所有する商業施設で、イトーヨーカドー岡谷店と松電ストア岡谷駅前店を核に運営が行われていた。
当時の写真を見ると、写真右上の塔の部分には「イトーヨーカドー」、建物の左上の壁面には「松電ストア」の看板が掲げられていた。
しかし岡谷市の商業求心力の低下に伴い、イトーヨーカドーは2001年7月に撤退、旧松電ストア(アップルランド岡谷駅前店に名称変更済み)も2002年6月に撤退した。
その後は一部物販店舗と金融機関、バスセンター、岡谷市役所岡谷駅前出張所のみが営業を続けていた。
岡谷市は2004年から2007年にかけて諏訪バスが所有していた施設を取得し、イベント会場を設けて利用するようになった。この時点で市は施設全体の約90%を取得している。
2015年〜17年頃には再開発事業としてマンションを併設した複合ビルに建て直すこと等も検討されたが、投資効果が見込めないので事業化できなかった。
市は施設の残り部分の取得を進め、管理組合は2019年に施設の廃止と解体を決定した。
2022年12月に商業棟を閉鎖、2024年には岡谷市がララオカヤの全ての権利を取得完了して、建物を完全に閉鎖した。
ところがここまでの5年間で物価高騰やアスベストの撤去費などで解体費が増大し、当初計画の3倍、15億円になってしまったという。
今年9月の市議会でララオカヤの解体に向けての調査設計費を計上した。
市は2026年に解体をする計画だという。
駅前から見たララオカヤ。

建物の周囲を歩いてみよう。
ここは建物の北西の角。出入り口部分はフェンスで囲んで入れないようにしている。
屋上は駐車場になっていて、斜路で車が上り下りした。

道路沿いに東へ歩いている。壁面に階段があり道路側に出入り口があったようだが、フェンスで塞がれている。

駐車場に向う斜路。駐車場は2021年に利用停止された。

建物の東側まで来た。右側に見えるのが駐車場に上る斜路。
左側の平地は、業者等の搬入口だったようだ。

そのまま左に視線を移すと、1階部分で本館と接続している別棟がある。ここは1・2階は店舗で3〜5階はマンションだったようだ。

店舗・マンション棟の南側。右側にある赤い物体は草間茂樹氏の作品である。
私が訪問したのは「諏訪ノ湖芸術祭2025」の最中だったのだ。草間氏はこの芸術祭のアートディレクターを務めた方だ。
ちなみに、奥の壁面の自転車と壁の貼り紙、落書きも含めて作品だそうだ。

ララオカヤの南側の道路。この道を奥へ進むと岡谷駅だ。

通路沿いの壁面に色が塗られている。
これも芸術祭のイベントとして、市民参加型による作品制作が行われた。8月30日から制作を開始し、4日間で述べ100人余が参加して壁面に色を塗ったのだという。
取り壊される建物へのはなむけの意味も込め、新たな交流をつくりだそうという活動だ。

壁のところどころに白い小さなプレートが見えると思う。それぞれが制作した作品には、一つ一つタイトルが付けられている。

当日は草間茂樹氏のアーティストトークも聞いたが、ララオカヤのペイントだけでなく、「商店街の中の民芸シリーズ」など芸術祭の活動について話された。
芸術祭の展示内容もトーク会場も地域に根付いていることを感じさせる良い雰囲気だった。
前半で書いたように、岡谷市は2026年にララオカヤの建物を解体する予定である。
その後の計画は現在検討中のようだ。
住民参加でまちの将来ビジョンを決めるため、住民参加のワークショップを今年の6月から9月まで毎月1回開催し、さらに2026年1月にも開催予定である。
どのように街が変わっていくか見守りたいと思う。
【参考】
「BEN-TEN│諏訪ノ湖芸術祭2025」公式サイト(2025 諏訪ノ湖芸術祭実行委員会)
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