名古屋城天守閣を文化財にしませんか?

名古屋城天守閣の木造再建計画。市長は積極的で、再建を前提としたパンフレットも配付されています。(画像は名古屋市の天守閣再建についてのパンフレットより。)

このパンフレットによると、
(1)現在の天守閣は老朽化や耐震基準の問題があるので、将来的に建て替えの必要がある。
(2)木造復元か、耐震改修かは両方の意見がある。
(3)でも市長は木造再建をするつもり。
ということが書いてあります。

この他に何か理由があるかと思って読んでも、「記録があるから再現できる」としかありません。
「耐震改修をしても、40年くらいしかもたない。」という理由はありますけど、これは木造にする理由ではなく鉄筋コンクリート天守閣を解体する理由ですね。

なぜ、「木造新築再現」なのでしょうか。

いくら過去の設計図に従って建築をしても、新しいものはただの複製、レプリカなんですよ。新しく作られたレプリカを、「歴史的な価値がある文化財」と見てくれる人はいないでしょう。もちろん、構造や工法に価値を見いだすことはできますけど。
観光面ではどうなのでしょう。現在の天守閣を維持して使うのと、木造新築にしたのでは、集客力が大きく変わるのでしょうか? もちろん完成直後は宣伝も派手でしょうし、話題にもなるので観光客は増えるでしょう。でも多分1〜2年で現状の鉄筋コンクリート天守閣と同じくらいになるような気がします。素人予想ですけど。

文化財にしたいなら、現在の鉄筋コンクリートの天守閣の方が、「登録有形文化財」の登録基準にすでに達してると思いますよ。

登録有形文化財の基準はこうなっています。
「原則として建設後五十年を経過したもののうち、
(1)国土の歴史的景観に寄与しているもの
(2)造形の規範となっているもの
(3)再現することが容易でないもの」

現在の名古屋城は、太平洋戦争中の空襲で焼失してしまった名古屋城を再現しようと、寄付等も集めて昭和34年に再建されたものです。過去の歴史的景観を再現しようという名古屋市民の活動によってできた天守閣は、もうそれで(1)の「国土の歴史的景観に寄与しているもの」に当てはまってると思いますよ。
(2)「造形の規範」については、鉄筋コンクリート天守閣も(厳密な再現ではないものの)過去のレプリカなので、そこをどう捉えるか悩みますけど、「江戸時代の名古屋城を「造形の規範」としてその再現を願ったものであるから、造形自体の意義を認める」という感じでしょうか。
(3)は当てはまりますよね? 簡単だっていう人は少ないでしょう。

(補足:この基準は3つのうち一つに当てはまれば良いのです。)

鉄筋コンクリート造は現在当たり前になってしまっているので、それ自体に文化財的な価値を見いださない傾向があるように思います。でも、関東大震災で大きな被害を受け、不燃建築を願って取り入れられてきた構造でもあるのですから、城を失った名古屋市民が「次は燃えない城を」と考える気持ちは分かりますよ。多分、強烈な願いだったんですよ。

ともかく、その気になりさえすれば、天守閣の文化財登録はほぼ確実だと思います。なにせ、文化庁の検討委員会が、「鉄筋コンクリート製の現天守閣について、『戦後都市文化の象徴』と文化財としての高い評価がされ、『解体するにはなお議論を尽くす必要がある』」とまで言ってるんですよ。(5月16日読売新聞)

木造再建は、工法等に意義はあっても新築のレプリカ建築なので、そのままでは文化財になりません。50年経てば分かりませんけど。
でも、「戦争で破壊されてしまったものを市民の願いで再建」したのと、「耐震基準が不安なので建て直した」のと、どちらが「歴史的意義がある」と思いますか? 戦争で破壊された方に決まってますよね。そういった意味を考えれば、50年経ったからといって、新しい木造レプリカが、今の鉄筋コンクリート天守閣のような価値を持つわけではないとも、考えられるわけですよ。

私も木造の再建そのものについては面白いと思いますが、現在の天守閣が経てきた約60年という歳月は、現在の人の都合で無にしてしまっていいものだとは思いません。江戸時代も、昭和時代も歴史の一部なんです。
新品のレプリカを作って観光客を呼ぶより、今の天守閣を登録有形文化財にして、市民で改めて価値を見つめ直す、というのはどうですか。名古屋市の皆さん。