戦前の銀行について調べてみた(1)
戦前の建築を調べていると、今はあまり聞かれない名称の建物に出会います。
例えば銀行についても、「○○貯蓄銀行」とか「○○農工銀行」というものがありました。
例)盛岡貯蓄銀行。もう10年以上前に作ったカードです。
「農工銀行」ではこれを作っていました。
例)宮崎農工銀行。6年前に製作したカードです。
一口に戦前といっても、明治から昭和の初めまで80年近い期間なので、法令も変わったりして私はよく解っていません。
そこで、まず昭和初期の資料から当時の様子を知ろうと思います。そしてできれば明治へと遡っていきたいと思います。
国立国会図書館デジタルコレクションで「近代銀行簿記教授資料」(昭和11年・長谷川安兵衛 著)というものを見つけたので、まずはそこから引用します。
「銀行の種類 我が国では銀行を次の三つに分類する。
(イ)普通銀行(Ordinary Bank)
(ロ)特殊銀行(Special Chartered Bank)
(ハ)貯蓄銀行(Savings Bank)
普通銀行とは、銀行法の下に設立される銀行をいひ、大部分の銀行はこれに属し、主として商業資金の供給をなすものである。特殊銀行は特別法令に據って設立され、或種の特権を有する銀行で(…中略…)。貯蓄銀行は貯蓄銀行法の下に設立され、複利の方法を以て拾銭以上の預金を公衆から受ける銀行である(普通銀行では1回10圓未満の預金は受けない)。」
このように、昭和11年の資料に「銀行は3種類である」と表記されています。(日本銀行についてはここには表記はありませんでした。)
以下、それぞれについてもう少し詳しく見ていきます。
(イ)普通銀行は数が多くて大変そうなので、どう整理する考えるために後回しにします(すみません根性無しで)。まず特殊銀行から。
(ロ)特殊銀行は次のようになっていました。(参考:wikipedia)
・日本興業銀行(重化学産業振興を担う)1900年日本興業銀行法公布により設立。
・日本勧業銀行(農工業の発展に寄与する)1896年日本勧業銀行法が制定され、翌年設立。
・横浜正金銀行(国際金融専門)国立銀行条例(1872~)に準拠して1880年設立。
・北海道拓殖銀行(北海道開拓を経済面で援助)1899年制定の北海道拓殖銀行法により翌年設立。
・朝鮮銀行(併合された朝鮮の中央銀行)1911年の朝鮮銀行法により、2年前に設立されていた韓国銀行を改称。
・台湾銀行(日本統治時代の台湾の中央銀行)1897年の台湾銀行法により、1899年に設立。
・朝鮮殖産銀行(朝鮮の農工業振興が目的)1918年に朝鮮殖産銀行令発布。それまであった農工銀行を統合して設立。
・農工銀行(北海道以外の都道府県に設立)1896年の農工銀行法による。1944年までに勧業銀行に吸収合併された。
どの銀行も、それぞれ個別の法令に基づいて設立されているのですね。
これは北海道拓殖銀行小樽支店です。
(次回につづきます)
補足 当時の別の書籍では,特殊銀行の中に日本銀行も含めて説明しているものもあります。(例:「最近銀行論」昭和6年)
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