動物画家 薮内正幸の世界

2021-03-20

長野県小諸市で「動物画家 薮内正幸の世界」というイベントが行なわれるというので、行ってきました。これはイベントのチラシを撮影。

薮内正幸氏(1940-2000)は、福音館書店で図鑑や絵本の画を担当し、のちにフリーとして活動した動物画家です。絵本や図鑑のほか、書籍の挿し絵や広告のイラストも制作しています。

まず、小諸図書館の中に入ります。
1月10日から18日まで図書館のボランティアルームでミニ原画展を行なっているそうなので、先にそちらをチェック。

小さな部屋なので作品は10点少々でしたが、丁寧に描き込まれた動物・鳥の絵が。
切手の原画としてアホウドリが描かれた作品もあって、切手の原画も描いていらっしゃったんですね。1975年発行の切手でした。

階段を上がって講演会場に入ります。

ホールの後ろの壁面全面と横の壁面の一部に、作品が展示されています。絵本「どうぶつのおかあさん」の原画が並んでいます。(その他の作品もありました。)
会場で販売も行なっていたので、買いました。はりねずみの絵が気に入りました。

さて、講演会です。

タイトルは「好きこそものの上手なれ」、講師は藪内竜太さん。薮内正幸氏のご長男です。

講演では、正幸氏の少年時代の話から始まりました。

動物好きで動物園に行っては一日中一種類の動物だけをじっと観察していた話。今日はライオン、と決めたら一日中ライオンだけを見ていたのだそうです。
気分はすっかりライオンになり、家に帰っても四つんばいで家の中を歩いていたとか。

小学生のときに買ってもらった動物本を愛読し、著者の高橋春雄氏に手紙を出すようになりました。手紙には動物の絵を描いて添えたりしていたそうです。その後、動物学者の今泉吉典氏とも文通が始まります。

今泉氏は動物図鑑を作りたいと考えていて、出版しようという会社がなかなか見つからなかったのですが、何年かして福音館書店がそれを引き受け、専属の画家を探すことになりました。今泉氏はその画家として薮内正幸氏(当時高校3年)を推薦したのだそうです。

正幸氏は特に絵の専門教育を受けたわけではないので、高校卒業後福音館書店の社員となり、一年間上野の科学博物館に通い、ひたすら動物のスケッチをし続けました。そういう経験を積み、画力もどんどんと上がっていったのです。

その後、図鑑の絵を描いていくのですが、残念ながら社内の事情で、図鑑の出版はなくなってしまいました。(企画はのちに別の出版社の「鯨類・鰭脚類」「世界哺乳類図説」1,2巻として日の目を見た。)

1965年、「くちばし」で絵本デビュー、その後絵本を始め、物語の挿し絵、図鑑や辞典の挿し絵、広告などに作品を描き続けます。

広告では1973年からサントリーの新聞広告「サントリー愛鳥キャンペーン」の絵を担当しました。彼の絵は現在もサントリーのサイトで使われています。

サントリーの愛鳥活動

講師の薮内竜太さんは、サラリーマンをしていたのですが、お父さんの死去(2000年)に伴い、退職して美術館の設立に向けて動き出します。学芸員の資格を取り、2004年に「薮内正幸美術館」を開館、館長を務めていらっしゃいます。

薮内正幸美術館 公式サイト

山梨県北杜市にあるこの美術館は、冬期閉館です。三月末に開館するそうなので、春か夏、気持ちのいい季節に行ってみたいと思います。