旧東洋キネマのポップアップカード(改良版)

2014年に東洋キネマのポップアップカードを作成して、型紙を公開した。
写真は、その当時のもの。

私は、「失われた近代建築. 2 文化施設編」(藤森照信 著・増田彰久 写真、2010年、講談社 )を読んで、この建物を知った。

カードを作るためにネットで写真を探したところ、映画館を閉館した後1階部分を改築したようで、改築後の写真がほとんどだった。それらの写真を見比べながら営業時を想像して作成した。

今年になって、「藤森照信のクラシック映画館」(藤森照信 著・中馬聰 写真、2019年、青幻舎)という本の中で、東洋キネマのことも書かれているのを見つけた。

設計図も第1案、第2案、実施案と掲載されていたので、その実施案を参考にしてポップアップカードを作り直すことにした。

この本によると、昭和時代、藤森氏が東京の戦前の建築の調査をしていた時に東洋キネマを見つけ、正体不明の映画館として発表した。そうしたら、設計者の小湊健二と営業の中根寅男の二人から連絡が入り、話を聞くことができたそうだ。

2階のバルコニー(矢印)は、ファンサービスとして、女優が立って挨拶と顔見せをしたところだという。

もともとは西村組が設計していたのだが、館主はそれを気に入らなかった。配線工事を担当していた小湊は、グランドキネマを設計した経験があったので意見を言ったところ、設計を任されることになったらしい。

当時評判だった有楽町の朝日新聞社を見て、自由にやっていいんだと感じたのだという。またドイツなど外国の建築図集やイスラム建築の本などにも目を通した。ギザギザした模様はイスラムの影響だと小湊は述べている。

より詳しい内容が「建築探偵の冒険─東京編」(藤森照信 著、筑摩書房、昭和61年)に書かれているそうだが、あいにく目を通すことができていない。

さて、カードを作り直してみたものの、入り口上部の庇の動きが少しスムーズにいかないので開閉にはちょっと気を使う。

そこで今回は、カラー版も作成して、そちらは別部品で補強しようと考えた。

できあがったものがこちら。

別部品は3つ使っている。向かって左側のバルコニー部分、中央の庇とその奥の壁面、そして右側の弧を描いた壁面の奥の部分を、それぞれ後ろから支えている。
壁面の「東洋キネマ」の文字も実物のレタリングに似せて書いた。ただ、屋根の部分の資料は見つけられなかったので、ここは想像で縁だけ着色してある。

パーツで補強したら、開閉はスムーズにできるようになった。

(お知らせ)
メインサイトは、一日遅れの更新となります。明日31日に旧東洋キネマも含めて東京の建築を3点アップロードする予定ですが、型紙公開は旧東洋キネマではなく、別の建物になります。