信濃川田駅
松代駅を見た後、信濃川田駅の駅舎も確認しに来た。
松代駅が解体されたら、旧屋代線の駅舎で残るのはここだけになるのだ。

ここも、駅舎はバスの待合室として使われている。
2012年(平成24)の3月31日に長野電鉄の屋代線が廃止され、鉄道に替わってバス「屋代−須坂線」が運行させるようになった。そのバス乗り場として使われているのだ。
2009年に撮影された駅舎の写真が、現在Wikipediaに掲載されている。それを見ると屋根は茶色に錆びてしまっている。今は緑色に塗装されているので建物の手入れは行われているようだ。
ホームの脇に50〜60mくらいだが、線路が残っている。

これは上の写真とは逆方向から撮影。この踏切のところでレールは途切れている。

当初の計画では、ここに鉄道車両を保管して「屋代線トレインメモリアルパーク」を整備するつもりだったらしい。
一時期は8両か9両の車両がここに保管(放置)されていたようだが、手入れもされず腐食が進んでいった。2014年から15年頃に数両が譲渡され、残りは2019年までに現地で解体されたそうだ。
長野市が2012年12月に発表した「千曲川新道活性化プラン~長野電鉄旧屋代線活用基本構想~」に掲載されている、各駅の活用計画は次の表の通りだった。
駅ゾーン | 駅舎 | ホーム | トイレ | 駐輪場 | その他 |
---|---|---|---|---|---|
綿内 | 活用 (耐震診断) | 片側活用 | 新設 | 活用 | ・多目的広場整備 ・バスロータリー整備 ・パークアンドバスライド用駐車場整備 |
若穂 | 撤去 | 撤去 | 撤去 | 活用 | ・パークアンドバスライド用駐車場整備 |
信濃川田 | 活用 (耐震診断) | 片側活用 | 新設 | 活用 | ・トレインメモリアルパーク ・多目的広場整備 ・パークアンドバスライド用駐車場整備 |
大室 | 撤去 | 撤去 | 撤去 | 新設 | |
金井山 | 撤去 | 撤去 | 新設 | 活用 | ・自転車道・遊歩道の休憩所 ・パークアンドバスライド用駐車場整備 |
松代 | 活用 (耐震診断) | 片側活用 | 既設有 | 既設有 | ・駐車場整備 |
象山口 | 撤去 | 撤去 | 撤去 | 新設 | |
岩野 | 撤去 | 撤去 | 撤去 | 新設 |
しかし計画通りにはいかず、綿内駅は既に解体済み、松代駅も解体決定、信濃川田駅のメモリアルパークは頓挫、自転車遊歩道は整備が進まない…と、活用というには寂しい結果になってしまっている。
とは言っても、駅舎自体はバスの待合所となっているので、実際に利用されているわけだし、中に入ることもできる。
壁には屋代線が使われていた当時の時刻表や運賃表が残っている。
壁面の一部はミニギャラリーとして写真が掲示されているが、その写真の下に「地震が発生したら外へ避難!」という貼り紙があった。多分耐震診断はしたのだろうが耐震補強工事はしていないのだろう。

建築中の河東鉄道町川田駅の写真も掲示されている。1922年(大正11)5月に撮影されたものだそうだ。この駅は最初は「町川田駅」という名前で、翌年「信濃川田駅」に改称された。

屋代線営業当時の運賃は、須坂駅まで390円、屋代駅まで580円だった。

天井の黒い穴(矢印)は、1945年8月13日に米軍が駅や川田小学校などに行なった機銃掃射の弾丸の跡だそうだ。説明が壁に掲示されていた。

掲示の作成者は「川田まちづくり実行委員会」とあった。内容から屋代線廃止後に掲示されたものなので、待合室は地元の人が維持管理に関わっているのだろう。
建物の維持管理がどうなっているのか気になって探したら、「令和4年度 ⻑野市歴史的⾵致維持向上計画に係る事業」という資料を見つけた。2013年から2023年までの事業の進捗状況をまとめたもののようだ。
そこに「旧信濃川田駅保存活用事業(交通政策課)」というページがある。
計画には次のように書かれていて驚いた。
「川田宿には、地域の歴史や文化を伝えるための施設が不足しているとともに、大通りから離れたところに歴史的まちなみが形成されているため、歴史的まちなみへの案内が不足している。本事業は、川田における歴史的建造物の一つである大正11年(1922)建築の旧長野電鉄屋代線信濃川田駅の駅舎を、川田宿の歴史を伝える資料館及び来訪者に対する案内拠点として利活用するため、内部改修と外観修景を行う。」
資料館にする計画があったのか?本当に? それってトレインメモリアルパークとは別の話?
実は長野市は既に「長野市歴史的風致維持向上計画第2期」を発表している。(2024年3月)
そちらを確認したら、「旧信濃川田駅保存活用事業」は現在も継続している事業だった。
ただし文面は大きく変わった。
「大正11 年(1922) 建築の長野電鉄旧屋代線信濃川田駅について、地域住民が主体的に利活用できるよう支援を行う。」
これだけである。この文章を見ると、駅舎の活用について長野市は全て地元に任せてしまったのだろうと思う。もちろん資料館の話も消えている。
施設管理といえば…。
トイレの清掃については長野市が業者に委託しているようだが、連休中のせいかもしれないが、まあすごいものだった(悪い意味で)。あれじゃ使えないですわ。
トイレの近くには2022年に立てられた説明板がある。
この周囲の歴史史跡など21ヶ所に説明板を立てたらしい。その説明板がある場所を地図にしたものがこの説明板だ。(なんか分かりにくい文章だ。)

立てたのは若穂地区住民自治協議会と若穂郷土史研究会とあったので、駅舎に限らず歴史資産を活かそうとする地元の活動はあるようだ。
信濃川田駅舎の活用についても何か良い案が出るといいのだけれど。
【参考】
「長野市歴史的風致維持向上計画(第2期)」(長野市サイト/2025年4月更新)
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