旧第九師団司令部庁舎
金沢市にある国立工芸館。
この美術館は、旧陸軍第九師団司令部庁舎(写真左)と、旧陸軍金沢偕行社(右)の建物を改修したものだ。

右側の旧金沢偕行社については先日記事を書いたので、今回は隣りにある旧第九師団司令部を見てみよう。
1枚目の写真は晴れているが、2枚目の写真は別の日の撮影なので曇っている。
こちらが旧第九師団司令部だ。

1898年(明治31)年に金沢城二ノ丸跡に建てられた庁舎は、戦後の1949年(昭和24)から金沢大学本部として使われていた。
その後、1968年(昭和43)に、現在の県立能楽堂の北東側の敷地に移築された。敷地が狭かったため移築時に両翼を半分に切り詰められ、県の庁舎として使われていた。
2017年(平成29)に国立工芸館として使うための移築工事が始まった。切り詰めた両翼も再建されることになり、2020年に工芸館は開館した。
旧偕行社の記事で使った写真を再度掲載するが、玄関前に設置してある説明板の図を撮影したものだ。左の司令部庁舎は中央部分は木造建築で、左右の増築部分は鉄筋コンクリート造である。

現在開催中の「花と暮らす」の展覧会に入った。
館内は、一部撮影できない作品はあるものの、私的な写真撮影は認められている。(フラッシュ・三脚の使用、動画撮影は禁止。)

そこで、今回は建物の内部の写真を掲載する。
受付を通ったその奥が、建物の中央部分になる。ここが玄関ホールだ。

そのまま後ろを向くと、二階へ向う階段がある。
階段の裏は現在は来館者用のロッカーが設置されている。

展示室に入ってしまうと床も壁面も新しいので、木造建築の雰囲気が感じられるのはこの階段くらいかもしれない。
階段の踊り場。
新しく見える白い壁だがこれは漆喰塗りで、建設当時のものを再現した。

階段を上った先、中央に見える小さなドアは休憩室の入り口。ここが旧玄関の真上になる。
司令部だった当時は、この部屋が師団長室だった。

休憩室の内部。逆光で見づらくなってしまったが、窓や天井などは現代的。当時の窓枠を残しその内側に新たに窓を作ったようだ。
中央にある長椅子は、備品ではなく作品である。(座ってもよいとのこと。あくまでも優しく…。)

長椅子の作者は、黒田辰秋(1904-1982)で、1949年の作品だという。
作品名は「欅拭漆彫花紋長椅子」(けやきふきうるしちょうかもんながいす)とあった。
長椅子の前に立って階段室の方を眺める。
壁はきれいになっているので古さを感じないが、ここも建築当初から漆喰塗りだったのだろう。

ホールの照明。天井のレリーフなども当時の意匠を復元した。照明も当時のものではなく再現品だそうだ。

建物の裏側がどうなっているのか気になったので廻ってみた。(こちらは1枚目と同じ日の写真)
目の前に見える棟は、鉄筋コンクリート造りで復元された部分だ。外観の色は竣工当時のものを再現したという。
外に鉄骨の階段が取り付けられている。この鉄骨の組み方は、建物に荷重を掛けずに階段だけで自立させてるってことかな。

玄関の裏側はこんな様子。フェンスに囲まれていて壁に近寄ることはできなかった。

旧陸軍では、1898年(明治31)に第八師団から第十二師団の5師団を新設した。この時に、司令部庁舎はほぼ共通の仕様で建設されたそうだ。
香川県善通寺市に残る第十一師団司令部庁舎も、似た形をしている。
【メインサイトの関連ページ】
「旧第九師団司令部」(2007ー06ー02 公開)
「旧陸軍第十一師団司令部」(2006-12-30 公開)
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