東京大学理学部2号館
「理学部2号館を救え!」というのがスローガンらしい。
東京大学本郷地区にある理学部2号館が大変だという。東大のウェブサイトにも建物の老朽化を訴える文や、寄附を呼びかけるページがある。

その言葉を借りれば「冷房設備の不備や外壁の損傷、漏水などの問題が進行しており、研究活動に支障をきたしています」とのこと。
というわけで、東京建築祭2025だ。
さすがに建築祭のウェブサイトの建物紹介ページには〝建物が危機です〟などという文言はなかったが、建築祭のインスタグラムには寄附を呼びかける投稿がある。
最初に建物全体の形と見学コースを確認しておこう。

今回一般公開されたのは、西側から入って螺旋階段を上り、4階の講堂を見るというコースだ。講堂を見た後は再び階段を下り西口から出る。(西口の階段は2つあるので、建築祭では上りと下りそれぞれ一方通行に指定。)
では、西口から入ろう。右側に玄関のドアがある。

玄関ホールの内側からドアを見る。

ホールには理学部2号館の年表が掲示されていた。

そこから拾い出すと、建物が造られたのは、
1929年(昭和4)3月、理学部2号館着工。9月鉄骨部分完成。
1930年 コンクリート工事。
1931年 建物外部仕上、タイル貼り。
1932年 建物外部仕上、その他工事。
1933年 内装及び付帯工事。
1934年 3月竣工。
という流れだった。5年間かけて建物が完成したのだね。
左下に「理学部2号館を救え!」の文字とQRコードが見える。
建物は1977年(昭和52)と79年に大規模改修工事が行なわれた。
その後は、2001年(平成13)に4階講堂を大改修、2007年に講堂の椅子と机を新調した。
2011年にエレベーターが新設され、2022年と23年にトイレの改修工事が行なわれている。
細かな修繕や整備は継続的に行なってきたそうだけど、大規模な補修工事は講堂を除けば40年以上受けていないんじゃないかな。
階段はこんな形。踊り場で左右に別れて2本の螺旋階段となる。

講堂の内部。上に書いたように、内部は2001年に改修工事が行なわれた。天井や壁など内装は全て塗装し直された。机と椅子は2007年に新調されたもの。

講堂から中庭を見下ろす。これは南側の中庭。

北側の中庭も覗いてみた。丸い池は水生動物用の飼育池らしい。

竣工時から建物の北側には動物学教室が、南側には植物学教室が配置されていたので、北側には飼育池、南側には植栽があるということだ。
講堂を出ると、ドアの右側にエレベーターがあった。
建築祭の見学はエレベーターの右側にある階段を下りて終了。

最近、公立の施設が行なうクラウドファンディングを目にするようになった。
2023年8月~11月に東京国立科学博物館が標本や史料の収集や保全費用にあてるためのクラウドファンディングを実施して、5万人以上が寄附をして9億円を集めた。
寄附が集まったことは良いのだが、国が予算を出そうとしないということに批判もあった。国は予算を増やさずに、施設の自助努力を求めているように見える。
クラファンで資金を集められるような知名度ある施設はほんの一握りだろう。それを「成功例」として祭り上げたら、資金収集力のない施設はどんどん衰弱していく。
公立大学にしろ公立博物館にしろ、文化教育施設は大切な社会インフラのはずだ。予算に限りがあるのは当然だが、社会インフラの維持のために国や自治体が予算を確保するというのは当然のことだと思うのだが。
報道を見ていると、国は目先の利益や華々しい成果だけを追い求めているように見える。
【参考】
「理学部2号館が老朽化している 東大の現状(3)|東山哲也」(広報室/東京大学ウェブサイト/2025-04-15)
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