旧山上宮坂製糸所(2)

6月に旧山上宮坂製糸所の記事を書いた。
長野県岡谷市の近代化産業遺産のひとつとなっている製糸所跡だが、施設の維持管理に不安を感じたということを書いた。

先日(11月初旬)、再び旧山上宮坂製糸所を訪れた。
これは事務所の写真だが、5月には玄関前の木が茂っていて建物が見えにくかったのだが、その後剪定をしたようで木が小さくなり、さらに葉が落ちたので玄関が見えるようになった。

玄関が北側を向いているので、晴れていると逆光になってしまう。
窓ガラスが失われているところがあるのは相変わらずだ。

ただ、事務所の東側にまわって旧工場を見ると、前回と少し違っていた。
敷地に立ち入らないように柵が立ててあるのは以前もそうだったが、向こうに見える建物の様子が少し違う。

写真で3棟あるうちの中央の旧工場棟は、前回は木に埋もれて倒壊寸前だったのだが、それが少し補修されていたのだ。
正式な補修ではなく応急処置のように見えるが、傾いていた建物を起こしてある。

5月に撮影した写真と比べてみよう。これは西側の道路から撮影したものだ。
(前回の記事を書いたのは6月だが実際に訪問したのは5月だったのだ。)

写真を撮る位置を揃えられなかったが、同じく西側から今回撮影したもの。
繁っていた木々は撤去され、傾いていた屋根を修正してある。
これは、保存に向けて改修工事に着手したと考えていいのだろうか。

上の写真の中央部分をズームアップした。
この写真では小さくて分からないが、大きな画像で見ると手前の柱に新たな柱を添えてボルトで固定してあるようだ。窓の部分にも新しい角材が見える。おそらく壁の歪みを直すための物だろう。

木が繁っていたと思われる奥の地面は整地されて平らになっている。

前回見た印象では、もうこの建物は解体するのだろうなと想像していたので、残して補修したことに少し驚いている。所有者は誰か分からないが(創業者の関係者だろうか?)保存の気持ちがあるということなのだろう。

この工場棟の様子では古い部材だけでは持ちそうにないので、新たに部材を足したり交換したりすることになると思うのだが、どのような形で残す予定なのだろうか。
私は現地を見ただけなので今後の見通しは分からないが、残そうとする姿勢は応援したい。

敷地の外側を回って、一番南側の工場棟を東南の方向から眺めた。屋根は傷んで波打っており、奥の方は軒先がボロボロになっている。壁の波板はおそらく保護のために貼ったのだろう。この棟も今後補修をするのだろうか。

使わなくなった施設は保存のために補修したとしても、使わないので結局放置されるということになりやすい。保存したものをどう活用するかというのが問題なのだろうが、事務所はともかくこの工場跡の状態では難しいようにも思う。
しかし岡谷市が近代化遺産として宣伝しているのであれば、手間と費用は大変だろうが、少なくとも(誰かが)維持管理をする必要がある。
個人的には、イベント時などに建物の内部見学ができるようになるとうれしいと思うのだけれど。

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