ロシアの建築を知る

2022-10-17

ポップアップカードを更新しました。今回はロシアの建築です。
今回はロシアのノヴゴロド,特にノヴゴロド・クレムリを中心に調べて建築を選びました。「クレムリ」はロシア語で「要塞」「城塞」を意味するのだそうです。
ノヴゴロド・クレムリは楕円形の城壁に囲まれており,南北が565m、東西が220mあるとのこと。その城壁の部分に建てられている塔の1つがスパスカヤ塔です。

写真はスパスカヤ塔をモデルに製作したカードです。

ノヴゴロドの場所はここです。(Google Mapより)


モスクワから北西の方向、エストニアの国境まで200kmくらいでしょうか。
ロシア内には他にもノヴゴロドという地名があるので、このノヴゴロドは区別するために「ヴェリキー・ノヴゴロド」と呼ぶのだそうです。
世界遺産としては,「ノヴゴロドと周辺の文化財」という名称で1992年に登録されています。

ロシアの建築について調べようと思っていたら,図書館でこの本を見つけました。

「ロシア建築案内」リシャット・ムラギルディン著 TOTO出版 2002年
著者は、1995年にモスクワ建築大学を卒業後,1997年に日本の文部省の交換留学制度で来日した方だそうです。日本建築学会の会員でもあります。

非常に数多くの建築を収録しており,今回ノヴゴロドについて調べるのにも参考にさせていただきました。ノヴゴロド・クレムリに塔があることも、この本で知ったところです。
私はほとんど知識のないところから調べ始めているので,ノヴゴロドの塔の名前とか全然分からず,この本とあとはロシア語のwikipediaや、観光情報などを見て回り,機械翻訳に頼ってなんとか塔の名前を知ることができました。


ポップアップカードの2点目です。
ノヴゴロド・クレムリの中では聖ソフィア大聖堂が有名らしく、よく写真を見たのですが,今回は同じクレムリの中にある別の教会を作りました。
ポクロフスカヤ聖堂です。
写真の右側の高い部分は聖堂ではなく、城壁の一部分です。この聖堂は城壁に接して建てられているのです。カードはちょっと、塔の部分が平面的で不満ですが…。しかも折ってみたら妙に折りにくくて苦心したので,こちらは写真だけにしました。

最初にあげたスパスカヤ塔の型紙を公開しています。よろしかったらお使いください。

さて、「ロシア建築案内」では、ロシアの建築の歴史について、時代を反映する10の様式をまとめています。自分はロシアの建築についてほとんど知識がないので、こういう流れを読んでなんとなく分かった気になりました(←実際には分かってないけど)。
書籍を参考にしながら,自分の勉強のつもりで短く書いてみます。

1 オールド・ロシア
10世紀のキリスト教の広がりとともに石造建築が発展。17世紀に中央集権が確立すると壮大な修道院が建てられた。

2 バロックスタイル
ヨーロッパでバロックが絶頂期だった18世紀に建都されたペテルブルグでは、バロック様式が花開いた。

3 ロシア クラシシズム
フランスの絶対主義の理念を表すスタイルとして復興された古典様式は、ロシアに大きな影響を与えた。1760年代からロシアで盛り上がる。

4 折衷
1830年代、資本主義が進むと,クラシシズムが時代遅れとされるようになる。さまざまな様式を取り入れた建築。

5 ネオ・ロシア
折衷様式の支流のひとつ。民族の伝統を見直し,科学的な視点ももって新しい価値観を見つけようとする。

6 ロシア・モダン
感情や思いを形に表現しようとする姿勢が強まる。さまざまな芸術の分野を統合しようとする意識を持っていた。

7 構成主義
1920年代。装飾ではなく,空間やフォルムといった建築要素によって表現しようとした。

8 スターリン・アンピール
革命後のソビエトでは、国家の威厳を強調する様式が選ばれた。スターリン・アンピール様式と呼ばれる。国立の建設事務所が仕事を行ない,私営の建設事務所は廃止に追いやられる。

9 ソヴィエト・スタイル
フルシチョフはスターリン・アンピールを否定した。経済性と機能性,合理性を優先した建築となる。

10 ポスト・ペレストロイカの建築
ペレストロイカ後,民間の建設事務所が立ち上がり始める。市場化によって,西欧のさまざまな古いスタイルやポスト・モダンが流入。混沌とさまざまな経験の蓄積。

(参考:「ロシア建築案内」リシャット・ムラギルディン著)

今回私が調べたのは,上の分類では「オールド・ロシア」に当てはまる時代のものですね。