旧小笠原邸見学記(1)
先日、新宿区にある旧小笠原邸を見学する機会を得ました。現在はレストランとして営業しているのですが、ときどき無料見学会を企画してくださるのです。(事前の申し込みが必要。)
当ブログでは建物の本来の用途を重視して「旧小笠原邸」と表記しますが、レストランの名前が「小笠原伯爵邸」なので、一般にはそちらの表記も使われています。
予定の時刻に行くと、すでに皆さん玄関前でお待ちです。
旧小笠原邸は1927年の建築。小笠原長幹(ながよし)伯爵邸として建てられました。
戦後の1948年に米軍に接収され、接収が解除された1952年に、東京都が法務省から購入したのだそうです。
翌年から福祉局中央児童相談所として利用してきましたが、1975年に建物の老朽化を理由に中央相談所が移転、以後保存活用を検討していました。
2000年に保存活用事業実施方針が決定され、借受者を公募。その後修復工事を行ない2002年にレストラン「小笠原伯爵邸」が開業しました。借受は10年ごとの更新のようで、現在は2013年4月~2023年3月までの借受が決まっています。
2004年には、東京都景観条例に基づいて「東京都選定歴史的建造物」に選ばれています。(東京都生活文化局のサイトより)
受付で名前を確認すると、邸内の案内図を渡され、あとは自由に邸内を見学できます。
ここがグランドサロン(食堂)。
見学用に説明表示もありました。来客をもてなした食堂だったそうです。中央の大テーブルもオリジナルの物で、「脚部の精緻な装飾が見ものです」と書いてあります。
となれば、テーブルの下を見ないわけにはいきません。大テーブルの脚部を撮影。
小笠原邸の歴史も説明板が表示されていました。
それを見ると、1975年に児童相談所が移転した際には、一度は建物の取壊しが決定していたらしいです。
その後、保存運動が活発になり1980年に都に要望書が提出され、福祉局が取壊しを取りやめたとのこと。
1990年に都の生活文化局が「歴史的建造物景観意匠保存事業」の対象建造物(150棟)のひとつとして選定し、翌年から保存・活用のための調査が始められました。
1999年に旧小笠原邸保存活用計画を民間へ公募、翌年借受者が決定し、レストラン「小笠原伯爵邸」が2002年にオープンした、という流れでした。
グランドサロンの隣がラウンジ(客間)。
窓ガラスのステンドグラスは、現存するのは1枚だけですが、もともとは全ての窓に施されていたそうです。日本で最初期のステンドグラス作家、小川三知(さんち)の作とのこと。
ちょっと日光が強くてうまく写りませんでしたが、床の絨毯です。
室内の様子。これはラウンジの中央あたり。
ラウンジの奥にあるのはシガールーム(喫煙室)。
ヨーロッパの煙草や葉巻がトルコやエジプトから輸入されていたことから、昭和初期には喫煙室をイスラム風に作るのが流行っていたんだそうです。
シガールームの外壁もおもしろいと説明板にあったので(いやさすがに「おもしろい」という言葉を使ってるわけではないですよ)、あとで見てみましょう。修復も大変だったそうです。
シガールームを出て、ラウンジに戻り、隣に移動するとそこがダイニング。現在はレストランのダイニングルームとなっていますが、当初は書斎と寝室だったところを一部屋に改装したのだそうです。
この飾り戸棚の部分は、当時の書斎の名残を留めている部分。
隣にベランダがあり、現在はレストランのテラス席として使われています。
ああ、ここが一番好きかも。
今回はここまで。続きはパート(2)で。
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