須坂市立博物館訪問

7月17日に須坂市立博物館が開館したというので、須坂市にやって来た。
この博物館は、建物が消防法に不適合の状態だったため2018年から休館となっていたものが、今回工事も終えてリニューアルオープンとなった。
私はこれまで訪問したことがないので以前の展示と比べることはできないが、どんな展示になったか見てみよう。

建物の前に鬼瓦が展示されていた。これは、市内の勝善寺(しょうぜんじ)が葺替え工事を行なった際(1968年)に、鬼瓦の片方をここに展示したのだという。この鬼瓦全体で重さは3トンあるらしい。

入り口横にある掲示板。右側のポスター「土器に込められた祈り」が、ここで開催されている展示。中央の「須坂藩窯・吉好焼」は、別館の笠鉾会館で開催されているものだ。

博物館の休館から再オープンまでの間に、須坂市では博物館基本計画を作成している。

その目指すところは、次のようなものである。

(1)まるごと博物館
市内の博物館関連施設や、点在している文化財、まちの駅なども含めて有機的につなげ、市全域を「まるごと博物館」とする。

(2)機能分散型総合博物館
まるごと博物館の実現のため、市立博物館、笠鉾会館ドリームホール、ふれあい館まゆぐら、旧小田切家住宅、文書館、文化財保存活用倉庫の6施設を統合し、各施設の特徴を明確にし、全体としてひとつの「総合博物館」となるよう再構築する。

それぞれの施設の場所は地図の通りである。

施設ごとの特徴をおおまかにまとめてみた。

(1)市立博物館(本館+分館)
各施設の連携を図る本館としての位置づけがされ、本館部分は無料スペースとして市のガイダンスやレファレンスを行なう。
分館部分は有料スペースとし、古代から中世までの考古関係の展示を行なう。収蔵庫は埋蔵文化財の資料を保管。

(2)笠鉾会館ドリームホール(分館)
江戸時代に須坂藩堀氏の陣屋町だったところに位置しており、主に江戸時代の資料を展示する。また毎年行われる祇園祭に巡行する笠鉾や、かつて舞台として使われた屋台、祭や伝統芸能などの展示を行なう。

この日は行かなかったが、以前行ったときの写真があったので掲載する。(リニューアル後、展示が変わっているかもしれない。)

(3)旧小田切家住宅(分館)
須坂の製糸業とまちの発展に貢献した小田切辰之助ゆかりの建物。明治から昭和初期、製糸業の歴史を展示する。

こちらも、以前撮影した写真。

(4)ふれあい館「まゆぐら」(分館)
明治時代に繭の貯蔵用の蔵として建てられた。養蚕や製紙関係の展示を行なう。

これも昨年の写真。

(5)文書館(分館)
この施設は、旧上高井郡役所の建物が使われている。文書等の資料の収集や保管・調査研究を行ない、一般の利用に供する。

(この建物は、以前ポップアップカードを作ったので、そちらの写真を掲載する。メインサイトのページはこちら。)

(6)文化財保存活用倉庫(分館)
資料の収蔵庫だが、博物館施設で展示できない大型製糸機械などを展示公開することもある。
私はまだ訪問したことがない。

今回は(1)の市立博物館を見ただけなので、他の施設についてはまた別の機会に書こうと思う。

さて、博物館の中に入る。

展示品ではないが、こちらに目がいった。階段の壁面にあるステンドグラスだ。この博物館は1966年に開館したそうなので、その時に作られたものかと思っていたら、もっと古いものだという。

もとは大倉製糸須坂工場の応接室と事務室の境の壁面にはめこまれていたもので、須坂市の有形文化財に指定されているそうだ。大倉製糸は1913年(大正2)の設立で、須坂工場は1918年に発足した。

ステンドグラスには、製糸業のシンボルである糸枠の絵と交互に並んでいる模様がある。最初何を意味しているのか分からなかったのだが、これは大倉家の家紋の「五階菱」なのだった。周囲には桑の葉がデザインされている。中央は大倉喜八郎が最初に叙勲された勲四等旭日小授章をかたどったものらしい。(須坂市のサイトによる)

展示物は一部撮影禁止だが、撮影可能なものも多い。2階の展示では、撮影可能なものにはこのようなマークがつけられていた。

この石は法華経が書かれた「経石」で、12~14世紀頃のものらしいが、須坂市ではなく坂城町の観音平経塚のものである。

こちらは「挙手人面土器」。長野市の片山遺跡から出土したものだそうだ。

冠とか装身具を表現しているのかと思ったら、手を上げているところを表しているらしい。

もちろん須坂市の遺跡からでたものも展示されている。1階の展示室には須坂市の遺跡から出土したものが並んでいた。

これは本郷大塚古墳から出土したもので、左側に勾玉、管玉、水晶、右側に耳飾りと鏡が並んでいる。

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さて、この日の流れから行くと当然次は笠鉾会館へ…という予定だったのだが、ここにあった1枚のチラシで行き先が変わったのだった。(つづく)

【参考】「須坂市が目指す新しい博物館~須坂市立博物館基本計画~」平成30年12月策定 須坂市・須坂市教育委員会)