伊那市創造館・特別展

伊那市創造館(長野県伊那市)は、もとは上伊那図書館として1930年に建てられた建物を補修して、2010年に博物館・生涯学習施設として開館した施設である。
ここで、7月26日から特別展が開かれているので見学しに行った。

特別展のタイトルは、「伊那に眠る巨大な戦争遺跡・陸軍伊那飛行場とその時代2」だ。
会期は2025年7月26日(土)〜12月26日(金)である。
(毎週火曜日が休館。入場は無料。)

タイトルに「2」という数字が付いているので、以前も開催されたのだろうと思って確認したら、2024年夏に旧陸軍伊那飛行場の特別展が開催されていたことを知った。私は昨年の開催を見落としてしまっていたのだった。
昨年の展示内容に加え、今回新たに発見された資料に基づいた内容も追加されているそうだ。

例えば、訓練用の複葉機「赤とんぼ」のプロペラの実物が展示されている。これは、伊那市高遠町の民俗資料館の蔵に眠っていたものが今年発見されたのだそうだ。
プロペラは長さ2.58メートルの木製で、重さが13kgあるという。

それから、熊谷陸軍飛行学校伊那分教所長を務めた米田大尉のアルバムが展示されていた。
彼は1941年に熊谷陸軍飛行学校に操縦教官として赴任し、1944年に伊那分教所が開所した際に所長として伊那に赴任したのだという。(所長を務めたのは9ヶ月間。)

アルバムには、訓練生や飛行機、飛行場や格納庫の写真なども含まれていた。

こちらは、第二飛行場の計画、軍需工場の建設、学校校舎の軍事転用など、この地域の軍関係の施設の状況をまとめたパネル。

素晴らしいのは、この地図や飛行場の配置図、それから年表をまとめたものが、持ち帰りできるようにA3サイズの紙1枚にまとめられていたことだ。これはうれしい。

これは飛行機を格納していた掩体壕の模型。掩体壕は空港の北東側にあったのだが、周囲に土手を造って木の枝などで隠すというものだった。

今年、この場所を測量した図面が発見されたので、それも参考にして模型を製作したのだという。

当時の学校の校務記録を見ると、校舎を軍需工場に転用する計画だったことも明らかになってきた。

こちらは、伊那飛行場の第三格納庫の模型。(これは昨年も展示されていたようだ。)
格納庫の大きさは40m四方で、12機の飛行機が格納できたそうだ。

戦後もしばらく格納庫は残っていて、戦後この場所を開拓した人たちは屋根から落ちる雨水を貯めて利用したそうだ。
この格納庫は1952年2月に大雪のため崩壊したという。
(第一・第二格納庫は戦後すぐに解体されたらしく、1947年9月撮影の空中写真にはその姿はない。)

展示会場は特別展示室とロビー(談話室)の一部だけなので決して広くはないが、内容は充実している。
12月まで開催されているので機会があればご覧頂きたい。

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