美和ダム(1)
4月中旬。高遠城址公園の桜を見た後、美和ダムに向かうことにした。
車を停めた駐車場まで歩き、国道152号線を南へ向って車を走らせる。高遠大橋を渡って左折し、2.5kmほど走ったところで、道路からダムの堤体が見えた。美和ダムだ。
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道路脇に車を停められるスペースがあったので、そこに車を置いて歩道から撮影した。
何かは分からないが工事をしているようだ。
ダムの堤体から少し離れたところ(上の写真ではダムの右側)、そこに排水口?のようなものがあった。あれは何だろう?(次回触れる予定)
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堤体をズームアップ。これからあそこまで行ってみよう。
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車で移動してダム湖のほとりまでやって来た。
写真では影になってしまって分からないが、手前の石には「ダム湖百選 美和湖」というプレートが嵌められていた。
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その奥には「美和ダム60周年記念碑」が設置されていた。2020年(令和2)1月に設置されたものだ。
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1952(昭和27)年、三峰川(みぶがわ)総合開発事業が始まった。三峰川は仙丈ヶ岳(3033m)を源流とする天龍川最大の支流で高遠町を通り伊那市で天龍川に合流している。川沿いには耕地が広がっていたが、洪水時には土砂を含んだ水が押し寄せて耕地に被害が出ていた。また土砂は天龍川下流にまで及ぶので天龍川治水にとって問題となっていた。
これを防ぐために作られたのが美和ダムだ。
当時の地名で書くと、美和村非持と対岸の河南村(かなみむら)勝間の間に高さ70m、延長400mのコンクリート堰堤を造り、3,700万立方メートルの水を溜める計画だった。
この湖ができると、美和村では水田67ha、畑7.4ha、山林34ha、人家34戸が水没してしまうことになる。田畑を失う家は281戸にのぼり、地元では反対運動が起こった。
県が仲裁に入り補償するということで1953年に工事は始まったが、補償交渉がまとまるのは3年後の1956年のことだった。
約40戸が伊那市や東京、愛知県などへ移住した。
1957年12月に試験湛水を開始し、1959年11月に美和ダムが完成した。
ダム工事中の1957年に、特定多目的ダム法が施行され、美和ダムは洪水調節機能を主体とし、合わせて発電と灌漑を行なう多目的ダムとして完成した。
なお、美和村は1959年に伊那里村と合併して長谷村となった。現在は伊那市となっている。
次の写真はダム管理事務所。「国土交通省天龍川ダム総合管理事務所 美和ダム管理支所」と玄関部分に書かれていた。
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建物の横には周辺の絵地図と、美和ダムの説明が書かれた案内板が立っている。
堤高 69.1m,堤頂長 367.5m。湛水面積は1.79㎢とあった。
では、ダムの堤体に行ってみよう。桜が満開だ。
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…と思ったら、「立入禁止」の札があった。何か作業をしているようだ。行けないのかな。
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仕方ないので、ダムの下側に行ってみることにした。池や遊歩道が作られてちょっとした公園になっているのだ。
看板を見ると、二つの池は鶴と亀の形になっているらしいが、この位置からだとよく分からない。
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ダムを見上げる。
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チェーンが張られていて、ここで行き止まりだった。戻ることにする。
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戻ったらちょうど作業も終わったようで、「立入禁止」の札を片付けている所だった。良かった、これで堤体の上を歩ける。
これは半分くらい歩いて、振り返って撮影したもの。写真の右側がダム湖だ。
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もうすぐ堤体を渡り終える。突き当たりにトンネルがあるが、立入禁止だ。
ダム湖の西側は岩山なので、午後4時過ぎの今はここは日陰になっている。
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ダム湖の様子。右側の山肌が暗い。
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ダム湖の先をズームアップ。左側は午後の陽が当たっている。
あとで地図を見たら、写真中央に見える白い建物は、ダム堤体から2.2kmほど離れているようだ。
ダム湖の長さは5.2kmあるそうだ。
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この日はダムの堤体を見ただけで、ダム湖の上流側までは行かないでしまった。
後で調べたら、そちらも行っておけば良かったと後悔することになった。
(つづく)
【参考】
「わが国土 第2巻(自然とたたかう)」(木内信蔵 等編/講談社/1961)
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