子どもの本の夜明け 帝国図書館展
実はこの記事を書く数日前に展示は終わってしまったのだが、上野の国際子ども図書館で「子どもの本の夜明け 帝国図書館展」という展示があり、5月に見学をした。(会期は2024年3月26日~6月23日だった。)
子ども図書館の建物は、もともと帝国図書館として1906年(明治39)に建てられ、1928年~29年(昭和3~4)に増築されたものだ。附属建物も含めた完成は1930年で3月15日に竣工式が開催された。
1949年に国立図書館支部上野図書館と改称され、2000年に子ども図書館となった。
今回の展示は帝国図書館の歴史と、子どもの本の歴史とを対比させているものだった。
展示期間中に本のミュージアムやホール、大階段や廊下などの撮影ができるということだったので(一部撮影禁止箇所あり)、私はそれに惹かれて訪問をしたのだった。
この記事では建物だけについて書く。
本のミュージアムは3階にある。建てられた当時は閲覧室だった部屋だ。
室内にはこのような円筒形の壁が二つ設置されており、それぞれの円筒の内側と外側、両面を展示に使用している。
これは1906年に作られた閲覧室の入口の扉。今は人は通さないようになっている。扉の真鍮製プレートには「おす登あく」(押すと開く)と書かれている。
図書館の建物についての説明も展示されていた。
それによると、帝国図書館は満15歳以上の者だけが利用できる有料施設で、利用者は入口で閲覧券縣を購入する必要があったそうだ。(なお1941年からは20歳以上に制限が引き上げられたという。)
1901年(明治34)の「帝国図書館一覧」によると、「特別求覧券」が一回分5銭、10回の回数券だと30銭だった。「尋常求覧券」は一回分2銭、10回の回数券が12銭と書かれている。
特別求覧券を買うと、二階の特別閲覧室が使えて、冊数も多く借りることができた。
1912年(明治45)の「帝国図書館一覧」を見るとさらに「優待券」という券も加わったようだ。
会場には普通一回券(10枚つづり)と優待券が展示されていた。
なお、当時の上野動物園の入園料が大人5銭、子ども3銭だったそうだ。(1907年時点)
入館は閲覧室の席数による定員制だったため、満員の場合は玄関で順番を待っていたらしい。
現在いる部屋は3階の「普通閲覧室」だった部屋で、男性のみが利用することができた。女性は二階の「婦人閲覧室」を使っていた。
円筒の中から見上げた天井。
この部屋は長さ約26m、幅約13mで天井の高さが約9mある。天井や壁面は、漆喰の装飾で立体感を出している。シャンデリアは、写真等を元にして明治時代に使われていたものを復元した。
これは、入口とは反対側の壁面。小さな神殿を意味する「エディキュール」と呼ばれているらしい。私はこの言葉を知らなかったのだが、戸や窓などの開口部の両脇を円柱、上部をペディメントで囲む手法を言うそうだ。
エディキュールの下部はこのようになっている。右側は書庫に通じるドアになっていて、左側は開けると煉瓦の壁が見える。現在、明治時代の煉瓦壁を見ることができるのはこの場所だけだという。
昭和時代に撮影した写真を見ると、煉瓦壁の上に分電盤が設置されていたようだ。現在は撤去されたので煉瓦壁が見える。
エディキュールの左右には2本ずつ円柱が並んでいる。
廊下に出ると、説明パネルが設置されているのを見つけた。
閲覧室として使われていた頃の写真もあったので、一部分だけ拡大した。シャンデリアを復元するのに参考にしたのはこの写真だそうだ。
こちらは3階にあるホール。ここは1928年に増築された部分だ。この部屋も当時は閲覧室だった。
廊下の片隅に展示されていたもの。
左は目録カードボックス。パソコンで検索できるようになる前は、カードで蔵書を管理していた…という説明があったのだが。私が若い頃はこのカードを使っていたので、なつかしさを感じてしまう。帝国図書館で実際に使われていたものだそうだ。
右側には「リンネの木馬」という説明があった。植物学者のリンネが執筆時に使っていた机と椅子を複製したものらしい。黒いサドル部分に座ると、左側の板が机になる。机の角度は変えられるようだ。2014年にスウェーデン大使から寄贈されたと書いてあった。
国際子ども図書館では、夏休み期間中の毎週木曜日に親子図書館見学ツアーをやるそうだ。人気があるイベントらしく、もう受付は終了しているが。
また、夏休み以外の時期は、平日の火曜と木曜の午後に一般向けのガイドツアーを開催している。こちらも事前に申し込みが必要。
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