金沢市立玉川図書館別館(2)

金沢市立玉川図書館を訪れた。
館内にも入ったのだが、館内の撮影はできないので(撮影申請書の手続きが必要)今回の記事は建物の外観の写真だけである。

建物の西側から入ってみる。ここは業務用の通路なので一般車両は進入禁止だ。
進入禁止の立て札の後ろにある看板は、空調設備の取り換え工事についての掲示だった。

この煉瓦壁の建物は、現在は近世史料館という名前である。
その壁を西から見上げた。(雨が降っているのでレンズに水滴が付いた。)

右側のドアの部分、内側からフィルムか何かをガラスに貼ってあるようだけれど、それが劣化してボロボロになっている。
もっと長かった建物をここで切断したので、もともとこの部分は壁ではなかったはずだ。どこか別の部分の窓枠やドア・壁を移設したのだろう。

近世資料館を、南西側から眺めている。中央にある屋根は左側の玉川こども図書館への通路だ。

館内に入る前に一つ見ておきたいものがあったので南へ歩く。
玉川公園の端、小学校のグラウンドの横に、このような時計台があるのだ。

実はこの時計台は、金沢たばこ製造工場の正面中央の屋根に取り付けられていた時計台なのだ。
工場が解体されることになったので、金沢市米泉に移転した新しい金沢工場に時計台も移設したのだという。(移設は1973年のこと。)

2008年に玉川こども図書館が開館するにあたって、地元住民の要望もあり日本たばこ産業から金沢市が譲り受け、再びこの場所へ戻ってくることになったのだ。

時計を確認した後近世資料室の中を見学して、図書館本館との接続部分に来た。
ここから外に出られるが、雨が強くなってきたので本館の中も見ることにした。

写真は、近世史料館の南側の壁だ。
この建物は、外観はできるだけ旧来の姿を残すように修復され、内部の木造と鉄骨の古い構造体を取り除いて新たに鉄筋コンクリートで構造体を造ったという。
1984年(昭和59)に金沢市指定保存建造物に指定され、その後1996年(平成8)に国の登録有形文化財に登録された。

ところでこれは私が知らないだけなのかもしれないけれど、ひとつ疑問がある。

登録有形文化財のリストの名称は「金沢市立玉川図書館別館(旧専売公社C-1号工場)」となっているのだけれど、この専売公社C-1号工場というのはどういう意味なのだろう。
専売公社の発足が1949年なのだから、それ以前に建てられた工場が最初からそう呼ばれるわけはないので後付けの名称なのだろうけれど。
いくつか考えてみたが良く分からない。
(1)管理上の理由から、工場を棟ごとに区分してABCと名付けていた?
 (でも専売公社時代の敷地図を見たけれど、工場内を区分している表記はなかった。)
(2)専売局の各地方ごとに工場に記号が割り振られていた?
(3)専売局時代の大蔵省の設計図に雛形があって、形によってタイプAとかCとか呼んでいた?
…などと考えてみたのだが、良く分からない。

私が見つけた中で一番古い記載は1980年の「日本近代建築総覧」なんだけれど、日本建築学会が命名したのだろうか。
この表記がどんどん引用され、サイトによっては「この工場は1913年に専売公社C-1号工場として建てられた」などと書いているものまである。そのとき専売公社はまだないです。

しばらく館内で本を閲覧したが、雨は少し小降りになってきたようだ。
本館の周囲を散歩する気にはならなかったので、これで玉川図書館を出ることにした。
写真の右半分の壁面も、長い建物を切断した面である。

こちらは東側の壁面。雨に濡れた煉瓦もよいものだ。
ドアの脇にプレートが付いている。

近づいてみると金沢市指定保存建造物のプレートだ。

あらびっくり。金沢市も「大正2年に日本専売公社たばこ工場として創建された建物の一部で~」と、戦前から専売公社があったように書いている。
こうやってどんどん「正体不明の歴史」が作られていくのね。

そんなことを思いながら、玉川図書館を後にしたのだった。
この後靴に水が入っちゃってもう悲惨だったんだから。

北陸地方

Posted by Sakyo K.