りんどう橋(2)

りんどう橋にやって来た。橋の西側に駐車場があるのでそこに車を停め、橋を見学する。
まずは駐車場の前の歩道から、橋を撮影した。

橋の向こう側はテニスコートや丸子総合グランド、丸子総合体育館がある。

りんどう橋の周辺の地図を掲載する。

丸子総合体育館とグラウンドは、依田川と内村川に挟まれた場所にあり、自動車は南側からしか入れないようになっている。
この日は自分の目で確認しなかったのだが、東側にある露草橋(1999年3月竣工)も人道橋で車は通れない。
依田川を渡る橋は、上流側に丸子橋、下流側に依田川橋があるが二つの橋の間は 1.1km離れている。内村川は下流の依田川橋から1km上流に内村橋があるだけだ。

人道橋ではあるが、露草橋とりんどう橋とで依田川の東岸と内村川の西岸を結ぶことができるので、りんどう橋の設置位置は理にかなっている。

渡る前に歩道をうろうろする私。車道から橋へは階段で降りるようになっている。段差が小さく、いざとなれば車両も通れないことはない。(実際には鉄板などを敷く計画らしい。)

それから橋の横側を確認。製造日が2006年12月だという表示(右側)と、塗装記録(左側)が書かれている。

では渡っていこう。橋の幅はこれしかない。

トラスの上端をアップで撮影。大きい丸いものが組立る時に差し込むピンなのかな。

橋を渡って東岸に来た。

東岸で、橋の銘板を探す。
南側にあった。

「りんどう橋2006年12月 上田市」と書かれている。
橋の沿革も記されていて、ほぼ前回の記事で書いた内容だが、少し違う部分もあった。
明治時代に輸入して九州で使われていた時の話しだが、
「九州鉄道(株)または豊洲鉄道(株)路線に使用」
と書かれている。豊洲鉄道の名前は講演会では出なかったな。
豊洲(あるいは豊州?)鉄道は、福岡県(現在の行橋市)に本社があり、福岡から大分にかけて路線をもつ鉄道会社だったらしい。

国立図書館デジタルコレクションで検索したら、「豊州」の文字で掲載されていたが、なぜか最初に不穏な記事を見つけてしまった…。

「豊州鉄道の崩壊 同鉄道は既に試運転を了へしが頃日の大雨に油須原の一丁許り西なる掘割の地盤に緩みを生じ去十二日八百餘坪俄然崩壊し為めに四十餘名の工夫は土中に埋められしが直に救ひ出したるも十四名は即死を遂げ二十一名は重軽傷を負ひ六七名は幸に無事なりしと」
(「交通」第110号 交通雑誌社 1895年7月)

今月というのはおそらく1895年(明治28)7月のことだと思うが、開業前に地盤崩壊で死者を出しているではないか。

豊州鉄道はその事故後の8月には開業をしたのだが、6年後の1901年(明治34)には九州鉄道に合併した。
鉄橋については、どこの場所で使われたのか正確に分かっていないので、豊州鉄道の路線だった可能性もあるということなのだろう。

橋の下にも入ってみた。
太いパイプが通っている。講演会では、災害時に上下水道を通せるよう設計したと話していた。

部材に製造元のハーコート社と、補修部品を作った八幡製鉄所の刻印があると聞いたので、それを探そう。

八幡製鉄所の刻印を見つけた。

「SEITETUSHO YAWATA ヤワタ」と書かれている。
この部材は、1928年に千曲川橋梁を再建した際、不足した部材を補ったものではないかと言われているが、詳しい事情は分からないらしい。
九州で使われていた時に、一度架け替えをした際に鉄骨が補充された可能性もあるし。

そして、もう一つ刻印を見つけたのだが、「A.H.A.V」と書かれていた。左右には「F」の字を横に倒したものが書かれているが、これは文字ではなく装飾として置かれているように見える。

後で調べたら、「ボーストリングトラスの復元事例の紹介」(木下潔/土木史研究講演集 Vol.28 / 2008)で、その答を見つけた。
A.H.A.V は「Aachener Hütten-Aktien-Verein」の頭文字だそうだ。

Wikipedia で探したらルクセンブルク語版に掲載されていた。
Aachener Hütten-Aktien-Verein というのは19世紀半ばから稼働していたドイツの製鉄工場の名前らしい。自動翻訳でうまく訳せなかったが、単語を分けて訳した結果、「アーヘン製鉄所株式会社」というのが近いのかなと推測する(自信はない)。
工場は1926年に閉鎖されたが、管理棟と工場の建物はまだ存在しているらしい。

以上の豊州鉄道やアーヘン製鉄所については、この記事を書く段階になって調べたことだ。

見学当日の私はそんなことは知らず、ただお目当ての刻印を見つけて撮影して喜んでいるだけだった。日本の刻印とドイツの刻印を見つけたので、橋の見学を終えたのだった。

りんどう橋が今後もこの場所で多くの人に使われて、そして歴史を伝えていってくれるといいと思う。

【参考】
「ボーストリングトラスの復元事例の紹介」(木下潔/土木史研究講演集 Vol.28 / 2008)

土木建造物

Posted by Sakyo K.